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日本語変換のコツ
 
1.はじめに
2.日本語の文字と「変換」
3.変換の必要な日本語
4.まず、ひらがな
5.確定とは
6.変換のタイミング
7.練習しましょう
8.カタカナで書く言葉
9.カタカナで書きたい言葉
10.漢字仮名交じり文に入る前に
11.小学生の日本語変換
12.変換操作に慣れましょう
13.おさらい
14.文字入力から日本語入力へ
 
コンピュータを道具として使うとき、文字入力を外して考えることはできません。文字入力も、ほとんどが日本語としての入力です。しかし、日本語をスムースに入力することは、けっこう難しいことです。
一般的には、いわゆるローマ字入力を使うことになりますが、まず、アルファベットを使って入力することに一つめの難関があり、更に、入力したひらがなを、漢字仮名交じり文に「変換」することに二つめの難関があります。
難関と言わないまでも、億劫に感じておられる方も多いことだと思います。
一つめの、アルファベットを使うことについては、訓練と慣れでかなりカバーできます。
しかし、「変換」についてはどうでしょう。正しいやり方があるのかどうかわからないし、何となく億劫だけれど、そういうものなんだと思ってやっている方も少なくないことと思います。
ここでは、この「変換」に、ひとつの答えを考えてみたいと思います。「変換」を伴った文字入力が、「思考を妨げない程度」にスムースにできることを目標においています。
(※) アルファベットを使うことについては、別稿31.ローマ字入力の秘密32.ホームポジションの勧め を参照してください。
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日本語の文章は、ひらがな・カタカナ・漢字・括弧や句読点などの記号からなっています。算用数字やアルファベット、そのほかの記号は、おそらく本来日本語にはなかった文字ですが、今の日本語、特に横書きの文章には多用されています。
コンピュータで日本語を入力しようとする場合、一般的には、キーボードを使って画面にひらがなを表示し、変換操作によって、ひらがなをこれらの文字種に「変換」します。
カタカナや、半角英字などは、入力文字種を変更することで直接入力できますが、これらも、ひらがなで入力したあとで目的の文字種に「変換」できます。
よく、「漢字変換」と言われますが、このように、「変換」操作は、入力したひらがなを、豊富な文字種のうち、最も適したものに替える操作のことで、必ずしも「漢字」にすることだけではありません。
このことを、まずはじめに、頭に置いておいてください。
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文字を入力するとき、入力位置には、文字入力カーソル(※)といって一般には点滅する縦棒(横書きの場合)が表示されます。これが表示されて点滅しているときは、コンピュータは文字入力待ち状態、と言えます。
字を入力していくと、このカーソルが進んでいきますが、英語と日本語で大きな違いがあります。英語の場合、アルファベットだけなので、このカーソルは一方通行でどんどん進んでいくだけですが、日本語の場合、変換のタイミングで、カーソル(コンピュータが操作している位置)の進みが行きつ戻りつします。
英語では、考えたとおりの文章が考えたとおりに画面に写されていくわけですが、日本語ではそうはいきません。変換のタイミングで文字種や漢字を選んだり、選ばれた字をチェックする工程を経ないと、つぎへ進めません。
(たぶん、アルファベットに記号を付けるフランス語などでも、その箇所では流れが滞るのではないかと思うのですが、日本語ほどではないでしょう。)
だから、頭の中で考えた文章を入力していくとき、ともすると思い浮かべていた次の文章がどこかへ消えてしまいかねないのです。手で書いたものを清書するだけなら、それほど問題にはなりませんが、コンピュータ上で文筆活動をしようとする場合には、困ってしまいます。これを、少しでも少なくすためには、変換操作に手間取らないようにしなくてはなりません。
(※) 文字の入力位置を示す、一般的には点滅している縦棒のことは、文字入力カーソルとか、文字入力ポインタと言われますが、マウスの位置を示す矢印などをカーソルと呼び、文字入力位置を示すものをキャレット、と言うことがあるそうです。(『アスキーデジタル用語事典』より)
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漢字仮名交じり文を作るためには、一般的には、まずはじめに、画面にひらがなを作ります。これには、アルファベットを使った、いわゆる「ローマ字入力」が多く使われています。まずどんな文字種でも「変換」することで出せるので、ひらがなを画面に表示できればいいのです。
少なくとも、ここで「思った通り」のひらがなが画面に表示できないと、文筆活動には結びつきにくいです。コンピュータが清書の道具から文筆活動に使えるツールになるには、ひらがなを表示するためにアルファベットを拾っている時間は少なければ少ないほどいいわけです。
これには、ひとつには、ひらがなを表示するためのアルファベットの表記を暗記すること。ひらがなを思ったとき、表記のためのアルファベットがすぐ思い浮かべられることです。次には、目的のアルファベットがキーボードのどこにあるか、ひとつずつ探さなくてもいいように、これも暗記できていることです。
ここまでできれば、一本指打法で入力しているのは、じれったくなります。こうなったときには、タッチタイピングといって、両手の指を使った入力法を練習されることをお勧めします。特に、初めてコンピュータを使って文字入力をされる場合には、ホームポジションでの入力を心がけるといいと思います。(別稿32.ホームポジションの勧め 参照)
タッチタイピングでの文字入力になれてくると、文字単位で画面にひらがなを表示する、というよりは、日本語の文章(文節単位)を画面に表示できるようになってきます。つまり、頭の中で考えた文章が入力できるようになります。画面で文筆活動ができることに近づいてきました。
次の段階は、表示されたひらがなを、日本語として適切な文字種に変換することです。
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変換操作がスムースにいくには、コンピュータを賢くすることです。どういうことかと言えば、一度の変換で、思い通りの目的の字がコンピュータによって第一に選択されるようにすることです。
日本語の文章を作る、という意味では、使っている日本語変換システムによって、かなり動作が異なります。ここでは、共通に言えることについて主に書いています。
ひとつ心に留めておきたいのは、コンピュータで文字(日本語の文章)を入力することは、原稿用紙に文字を書くのとは、根本的に異なる、ということです。
原稿用紙に鉛筆で字を書くとき、例えば「富士山」なら、まず、「富」という字を書きます。このとき、次の「士」という字は、まだ原稿用紙の上には見えません。しかし、書いている人の頭の中には、「富士山」という言葉があるので、「ふ」という読みで漢字は「富」と書いているわけです。
コンピュータにこれを入力する場合、書き手の頭の中にこの言葉があったとしても、「ふ」とコンピュータに書いた時点では、その次に「じ」「さん」と続くかどうかは、コンピュータにはわかりません。従って、「ふ」というひらがなにどの漢字を当てはめればいいのか、コンピュータが判断することは不可能なのです。しかし、「ふじさん」と書いてあれば、「ふ」には「富」の字を当てはめるのが適当だということが、コンピュータにもわかります。
コンピュータで字を作る(書く)ときは、原稿用紙のように、1文字ずつ作るのではなく、富士山という「言葉」を作るわけです。もっと言えば、「富士山に」とか「富士山を」とかいうように、「文節」を作っていくのです。いくつかの字種の混ざった言葉(文節)を、一度に作ります。こういうふうに「言葉」や「文節」を「作る」ことを、「確定」と言います。
「確定」というのは、変換して出てきた(コンピュータが採用した)文字を「採用」することです。採用すると、コンピュータは、次に同じ文字列で変換したとき、前に採用された文字を最初に選択して表示します。
上手に確定することが、コンピュータを賢くすることへの早道になります。
逆に、間違った確定をし続けると、コンピュータ上で文字を作ることは、どんどんやりにくくなってきます。
確定するには、Enterキーを押すか、変換後に(Enterキーを押さずに)続きの文字を入力します。
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子どもたちが文字入力をしているとき、その画面を見ていると、しょっちゅう変換文字の選択肢を表示する小さなウィンドウが表示されます。
上手な変換をしている人では、このウィンドウはほとんど表示されません。それは、変換のタイミングをつかんでいて、変換結果の文字を選択する必要がないからです。そうなれば、文字入力が思考の流れを妨げることが少なくなります。
よく行われている変換のタイミングは、字種の変わるところです。例えば、漢字からひらがなに変わる箇所です。なぜか、ひらがなから漢字になるところでは変換しません。
「彼は医者に会った」という文を例にしましょう。子どもたちは「彼」を漢字にします。次に、「はいしゃ」と入力し、変換します。「は」と「いしゃ」はつなげて、「いしゃ」と「に」を分けています。当然、「歯医者」となります。ここで再びスペースキーを押して、目的の漢字「は医者」を探そうとします。今の変換システムでは、こういった変換作業にも対応するように変わってきていますが、万全とは言えません。そこで、センセイコールとなります。残りは、「にあった」→「似合った」となってしまいます。
「は」と「いしゃ」を分けたとしても、「彼は」と作るのに、2度の変換作業をしています。ひらがなだけの時も、そのまま確定(Enter)すればいいのですが、必ずスペースキーを押してしまう習慣の子どももいます。
逆に、間違った文字が混ざっていても、とりあえずEnterキーを押して確定してしまったあとで、Backspaceキーでそこまで戻って字を入れ直す、ということはよく行われています。上にも書いたように、間違った変換のままEnterキーを押すことは、コンピュータに間違った文字を覚えさせることになるので、好ましくない操作です。できるだけ未確定状態で目的の文字を表示できるのが、次からの快適な日本語入力に結びつきます。(※1)
変換は、文節の切れ目で行うのが、効率のよいタイミングです。文節、というのは今の小学校では教えない、と聞きました。昔は、「ネ」を挟むことのできる場所が文節の切れ目、と教わりました。「彼はネ医者にネ会った」と読めれば、変換する場所は見えてきます。音読の時に息継ぎできる場所、と言ってもいいでしょうか。逆に、文節の切れ目ではない場所では、変換しない、これが大切です。(※2)
文節の切れ目で変換・確定していくと、変換システムはどんどん賢くなってきます。逆に、漢字を1文字ずつ確定していくと、いつまでたっても変換システムが「言葉」を覚えないので、思ったように漢字が選ばれてきません。文字入力がストレスの多いものになりかねません。
どうすればいいかと言えば、書きたい文章を、日本語として区切れる箇所で分けて、ひとまとめにして扱うことです。「彼は医者に会った」なら、初めの固まりは「彼は」であって、「彼」ではないことがわかることが大切です。「は医者」というのは、日本語としての固まりにはなりません。この日本語としての固まりごとにコンピュータに「移し」て、「変換」するのが、効率のよい「漢字仮名交じり文」の入力に繋がります。
コンピュータは、「文字」を扱っているのではなく「日本語」を扱っているのだ、ということです。更に言えば、日本語を正しく使えることが、コンピュータ上で上手に日本語を扱えることに繋がります。
(※1) 変換したとき、その始めの方に望まない文字が表示されるのは、たいていは文節区切りで変換していないことによります。そういう文字は、直前の文節の一部(助詞など)であることが多いです。また、複数の文節を一度に変換したときにも起こります。未確定状態のままこれを直すには、「部分確定」や「変換位置の移動」、あるいは「文節区切り位置の変更」、などの方法があります。詳しくここで説明するには、少し技術的になりますので、お使いの日本語変換システムのヘルプなどを参照してください。こうならないためにも、変換に慣れるまでは、文節ごとの変換をお勧めします。
(※2) もちろん、文章(文字)によっては、臨機応変に、文節の途中での変換も必要ですが、これができるには、日本語と、日本語変換システムとの性質をよく知らなくてはなりません。ここでは、これについての説明は省略します。
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大人であれば、文章の切れ目(文節)を意識して変換することは、さして難しいことではないでしょう。しかし、小学生の場合には、この切れ目は練習の時には明示していいと思います。
課題の文章を配布するなら、その文章の文節の切れ目に印を付けておきます。この印が、スペースキーまたはEnterキーを押す位置で、逆に言えば、この印のないところでは、変換も確定も原則としてしない、という意味になります。
印を付ける場所は、上にも書いたように、文節の切れ目です。また、句読点があればその後ろになります。括弧では、初めの括弧と閉じ括弧の形が自動的に対応した形になるので、一気に入力すると楽なのですが、小学生では扱いが難しいので、カギ括弧などの記号は入力即確定でいいと思います。
小学生では、コンピュータに向かって文筆活動をするのは難しいので、あらかじめ文章を書いてきて、それをコンピュータに写す、という場合が多いかと思います。この場合に、文節単位で移す、と説明してもなかなかその通りにはできないので、課題の文章を何度も練習して、変換のコツを身に付けることは、有効だと思います。
何度も言いますが、変換のタイミングを掴むことは、コンピュータを賢くし、ひいては日本語入力を楽に進めることに繋がります。
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「変換」は漢字を作るのではなく、日本語としてふさわしい字種に変えることだ、と書きました。だから、カタカナの言葉もひらがなを入力して、「変換」で作ります。
カタカナ言葉は、小学校2年生で習うので、コンピュータでは3年生で練習するといいと思っています。
初めは、一般的にカタカナで書く(コンピュータの日本語変換システム(※1)がカタカナで書くと判断している)ことばを見つけます。
≪授業例≫
いくつかのジャンル(動物、植物、外国の国名、コンピュータ関連等)をヒントとしてあげ、カタカナで書きそうな言葉をあらかじめ書き出しておいて、スペースキー1度でカタカナになることばをたくさん見つけます。
これで、カタカナは変換で作ることができる、ということが実感できます。
変換でカタカナを作るときには、長音(のばす棒長音府「−」のこと)に注意します。
カタカナ言葉では、たとえば「ケーキ」という言葉なら、カタカナを習っていない1年生では、「けえき」とひらがなで書きます。「ケーキ」には、1年生向きに「けえき」とふりがなが振られています。「ケーキ」と書くためには、当然「けーき」と入力してからカタカナに変えるわけですが、「けーき」という日本語はないのです。「けえき」と入力したのでは、「ケーキ」は作れません。これが、コンピュータで文字入力することの特徴です。つまり、画面にひらがなを並べるのは、日本語を書いているのではなく、漢字仮名交じり文を作るための手段である、ということです。(※2)
アルファベットを使うことが、ひらがなを作ることの単なる手段で、決して「ローマ字」ではないのと同じに、ひらがなを連ねることの意味は、ひらがなで書く文章を作ることではなく、適切な字種で構成される日本語の文章を作るための手段のひとつ、という意味です。
(※1) お使いの日本語変換システムの辞書が、小学校の学年別になっている場合には、「標準」または「先生用」などにすることをお勧めします。低学年用の辞書では、たいていカタカナ、と思われる言葉でもひらがなになります。また、MS-IMEよりATOKの方がカタカナ言葉になりやすいです。変換システムによっては、どんな文字列を変換しても、必ずカタカナが変換候補に現れるものがあります。これだと、何度かスペースキーを押していればすべてカタカナにたどり着くことになります。そうではなく、ここではスペースキー1回でカタカナになる言葉だけを選びます。
(※2) このことは、姓名に使われている漢字を求めるときによくわかります。目的の時を含んだ熟語を考えて、コンピュータから字を引き出します。姓名をひらがなで入力して、目的の字が1度の変換で表示されることはなかなかないことです。
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前項では、「一般的にカタカナで書く言葉」を集めました。
ここでは、カタカナで書かない言葉や、名前などコンピュータの辞書に登録のないことばをカタカナで書く方法を学びます。また、これを「確定」すれば、コンピュータに「学習」させることになり、次からは「変換」で出すことができることも覚えます。
≪授業例≫
カタカナで書かれた言葉のたくさん含まれている文章を、ワープロソフトを使って入力します。課題には、変換のタイミング(文節区切り)を明示しておきます。変換(スペースキー)で一度でカタカナにならないときは、F7キーを何度か押してカタカナの表記を作り、Enterキーで確定することでコンピュータに「覚えさせる」ことを学びます。一度覚えさせれば、次からはスペースキー1度で目的のカタカナことばを呼び出すことができます。
課題として、『キャベツくんとブタヤマさん』(長新太作・絵 文研出版えほんのもり)を使いました。この絵本には漢字はなく、一方、カタカナの言葉がたくさん出てきますが、「ブタヤマさん」など、辞書にないカタカナ言葉も出てきます。F7キーとEnterキーとで言葉をコンピュータに教えると、コンピュータはこれを覚えて、「賢くなる」ことを知り、自分でもやってみようと思います。
F7キーを押すと、入力された文字がすべてカタカナになります。文節で入力すると、例えば「ブタヤマさんが」は、いったんは「ブタヤマサンガ」となりますが、続けてF7キーを押せば入力文字列の最後の文字からひらがなに戻ってきます。「ブタヤマサンが」→「ブタヤマサんが」→「ブタヤマさんが」となります。ここでEnterキーを押すと、「ブタヤマ」というカタカナで書く文字列をコンピュータに覚えさせることになります。(更に言えば、「ブタヤマ」というカタカナ言葉には、「さん」という接尾辞がつくこともコンピュータの変換システムが覚えます。)
この段階までで、カタカナで書きたいときは、なんでも変換操作で書けることを覚えます。
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前項では、文章の中の、変換や確定する適切な箇所を示して、カタカナで書く言葉の交じった文を作る練習をしました。
しかし、子どもたちはどうしても、カタカナからひらがなに変わったところでスペースキーを押してしまいます。また、助詞を次の文節にくっつけてスペースキーを押します。
題名の「キャベツくんとブタヤマさん」も、F7キーを使って「ブタヤマ」という言葉をカタカナに直すやり方を説明しますが、「キャベツ」を作ったあと、「とぶたやまさん」と入力してF7キーを押します。これでは、「と」をひらがなに直すことができません。
変換したり確定したりする箇所で課題の文を意味のあるまとまりに区切るわけですが、パソコンに文字を入力することが、文章を組み立てるのではなく、文字を画面に作る作業になっているので、このような手順になっているものと思われます。
文章を、意味のある固まりに分けて組み立てる作業は、文章を日本語として理解できていなくては難しいです。これができないと、コンピュータはいつになっても、清書のための機械でしかなく、文筆活動をサポートする便利な道具にはなりにくいです。
ここで今一度、日本語を扱う、という当たり前のことを、改めて意識してつぎへ進みたいと思います。
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ここまでのことができるようになっていれば、本来コンピュータ上で漢字仮名交じりの日本語を作ることはさして手間のかかる作業ではありません。
ただ、小学校で問題になるのは、「習っていない漢字」です。
4年生の国語の教科書(学校図書 4年上)に、「あめんぼはにん者か」という文章があります。これは、『アメンボは忍者か?』ですが、『忍』という漢字がこの時点では書かないためにこんな題名になっています。
コンピュータに、dangoとか、ATOKスマイルのような、小学生が使うことを前提とした日本語変換システムが導入されている場合は、学年に応じた設定にしておくことでこういう漢字の出し方にある程度は対応できますが、それも2学年ごとの設定になるので、ある特定の時点での漢字の力に応じることはできません。
変換の結果、習っていない漢字が表示されると、「これで合ってる?」という質問を受けます。熟語全部が習った漢字であることがわかっている場合を除いて、コンピュータで文字を扱う場合には、ひらがなでいいと思っています。ノートに手で書く場合のように、あえて「にん者」というふうに書くのは、日本語変換から見ると、入力の効率を下げることになります。
日本語変換システムには、学習機能があって、上手に使えば使うほど変換精度が上がるように作られていますが、「にん者」は、小学4年生の国語ではこう書きますが、一般的な書き方にはなりにくく、システムの学習の対象にするにはむいていません。また、学習させるには、おそらく「単語登録」が必要です。
習った漢字はできるだけ使う、というのが小学校での国語なのだと思いますが、コンピュータでの文字入力が「ローマ字」ではないのと同じに、コンピュータでの日本語変換では、習っていない漢字を含む熟語はひらがなでよい、という風に、教科としての国語とは別立てでお考えいただければと思っています。
もっとも、読める、ということを重視するのであれば、上記の子どもたちの質問に適切に答えることで、習っていない漢字を使うことも、ある程度はいいかと思います。正しい漢字を使うことができれば、読めるに越したことはありません。
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文字入力は、やはり練習です。
コンピュータを道具として使うために、思った通りの日本語の文章がスムースに画面に表示できることを目標としています。画面にまずひらがなを表示し、そしてその文字を「日本語」に変えなくてはなりません。
小学校での授業時数は限られています。そのなかで、コンピュータで文字入力できるための練習時間を確保することは、たいへん困難です。従って、効率よく日本語入力の力を向上させる練習方法を見いだすことが求められます。
ここでは、その答えの一つを紹介します。
キーボードを素早く打つ、更にキーボードを打って画面にアルファベットやひらがな(ローマ字入力)を表示するスピードを競う練習ソフト(多くはゲームの形を取っています)は、市販のものやフリーソフトでたくさん見つけることができますが、効率よく上手な日本語変換を身に付けるためのソフトはほとんど見ることができません。
日本語を作る練習をするためには、適当な「日本語」がなくてはならないので、ソフトに仕立てることが難しいのかもしれません。また、その「日本語」がスムースに作れるようになったとしても、すべての文章を上手に変換できるには、更に練習が必要です。
つまり、日本語の文章をスムースに入力できるためには、特定の文章を変換することを繰り返し練習しているだけではなく、その練習を通して、コンピュータの反応(変換結果)を予測してコンピュータと上手に対話できる力を持つことが大切になります。
変換結果を予測して変換していくには、コンピュータを扱う以前に、日本語そのものの力が必要です。それは、日本語の文章を意味のある固まりに「区切る」ことのできる力です。変換は、この固まりを単位として行います。
≪授業例≫
適当な文章を配布し、一定時間(5分ぐらい)で入力できる量を把握する。またこのとき、自分でスペースを押したり(変換)、Enterキーを押した(確定した)箇所に印を付ける。このあと、その文章の、変換にふさわしい「区切り」箇所を示し、各自が変換や確定した箇所との違いを検証する。たいていの場合、字種が漢字やカタカナからひらがなに変わった時点(助詞の前)で変換作業が行われいているので、その位置で変換することが適当でないことがわかるように、各自の付けた印をチェックする。
その後もう一度、「区切り」の位置以外では変換も確定もしないことを意識して同じ時間で文章を入力し、入力できる文字数の違いを意識させる。
適当な位置で変換する、言い換えれば、適当でない位置では変換しないことを徹底することで、必ず入力文字数は増えます。それは、ひらがな文字を画面に表示する速さが同じでも、変換にかかる時間が格段に少なくなるからです。この、変換する箇所が自分でわかるためには、たくさんの日本語を読むこと、それも音読して区切りを見つける力を養い、コンピュータで入力する際にその力を発揮できるように訓練することです。
音読することは、日本語を適切に区切るのに役に立ちます。上記の授業例でも、課題の文章を何度も声に出して読んでおくと、区切りが見えてくると思います。
「声を揃えて読む」場合、自分の読みとみんなの読みとがずれたら、揃えなくてはなりません。この、揃えるタイミングが、変換するときの「区切り」の位置です。当然、揃えるのは文節のあたま、句読点があればそのあとになります。この区切りがわかるようになれば、変換で戸惑うことは少なくなります。
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ここまでのことをおさらいすると、次のようになります。
○ 日本語には、漢字・ひらがな・カタカナ・記号などがあるが、これらは「変換」操作で作ることができる。「変換」は漢字を作るだけではない。
○ 「確定」は、変換の結果を採用するだけでなく、変換操作の結果をコンピュータに学習させる、という意味もある。
○ 「変換」操作は、文節の切れ目で行う。文節は、変換操作の単位。
○ 変換の練習課題では、文節の切れ目を明示しておくとよい。
○ 文節の切れ目を見分けるには、音読するとよい。
○ カタカナ言葉は変換で。変換で出てこない場合はF7で。
○ 習っていない漢字が熟語に含まれるときは、全部ひらがなでよい。
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課題の文章などを書き写すことを視写、というのだそうですが、このとき、1文字1文字を書き写しているのでは、時間もかかるし、文章の内容もなかなか理解できず、従って、正しい字も書けないことになります。コンピュータで文字入力をするときも、この視写と同じだと思います。
入力したい文章から1文字ずつ拾っていては、変換作業は思うようにできません。目的の字を表示するのに手間がかかります。また、コンピュータに適切な学習をさせることもできません。コンピュータ上に文字を作っていくことが、機械的な作業になっています。これでは、コンピュータを「使った」作業に繋がりません。
前項までに説明した「区切り」で文章を固まりに分け、その固まりごとに読み取ってコンピュータに入力し変換する、この習慣がつけば、日本語入力はかなり楽になります。文字入力が日本語入力になり、更に、コンピュータ上で文筆活動することに繋がります。文筆活動と言っても、何もたいそうな論文などを書くことだけではなく、例えばメールを書くときなどでも、考えながら書くことができます。メールを、手書きの下書きを手元に置いて書く人は少ないでしょう。自然体の文章を抵抗なく画面に表示できるようになれば、それだけコンピュータは幅広く道具として活躍できます。
コンピュータで日本語をなめらかに入力できるためには、自分の力で、入力したい日本語の「区切り」を見つけなくてはなりません。それには、たくさんの日本語を読んで、書いて、当たり前のことですが、日本語に親しむことが大切でしょう。
いくら、文節で区切る、と言っても、なめらかに日本語を綴ったり読み取ったりができない場合には、文節もわかりません。コンピュータは道具です。日本語<も>扱うことのできる道具です。はじめにコンピュータありき、文字入力ありき、ではなく、まず日本語の力ではないかと思います。
日本語の力あってこそのコンピュータだということを、最近強く感じるようになりました。
平成18年七夕 記
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