平成18年6月25日 |
1.はじめに 2.姿勢・キーボードの位置 3.ホームポジション 4.視線 5.ツール 6.まとめ |
パソコンを使うとき、パソコンに、使う人が意思表示をする代表的な道具として、マウスとキーボードがあります。今は、マウスを使えば、だいたいどんな作業もできるように作られていますが、文字入力なら、やはりキーボードに軍配が上がります。
ここでは、キーボードを使って文字を入力するときにたいへん役立つ、ホームポジションについて説明し、効率よくホームポジションを身に付ける方法についてご紹介します。
説明は、主として、一般的なキーボードを使って(いわゆる)ローマ字入力することを念頭に、小学校低学年に説明できる形を意識して書いています。世にホームポジションのための記事はいくらでも見つけることができますが、ここで敢えてこれを出すのは、どれも小学生向けではないと感じているからです。ですから、ここの説明は、そういう読み方をしていただきたいと思います。
大人の方で、もう、自分なりのやり方でストレスなく文字入力できる方に、敢えてホームポジションの訓練をお勧めするものではありません。しかし、パソコンを清書の道具ではなく、文筆活動の道具として生かしたい、もっとスムースにパソコンを扱いたい、とおっしゃる場合には、手元を見ずに入力できるやり方であるホームポジションでの入力を身に付けられることを、強くお勧めいたします。
小学生で、初めて文字入力を覚える場合には、いくつかの理由から、初めからローマ字入力を覚えて、早い時期にホームポジションでの入力を身に付けられるようにするといいでしょう。(別稿2.初めてのキーボード 参照)
また、小学生のうちから、自己流で文字入力をすることも避けるべきだと考えています。
パソコンで文字入力をする場合、画面だけを見て、手元(キーボードのキー)は見ずに入力できることが、「思った」ようにパソコンを道具として使いこなすための早道です。文字を入力することは、必ずしも文書を作るためだけではありません。パソコンの操作もキーボードでできることも覚えると、ますますホームポジションが大切であることがわかってくることと思います。
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ホームポジションの説明の前に、文字入力をスムースに行うために気をつけたいことについて説明します。
キーボードを素早く打つためには、まず姿勢が大切です。
両手が「ハ」の字になっていてはいけません。手首を寄せて、8本の指がほぼ並行になるようにします。こうなるには、脇が空いていては無理です。下敷きを挟んでも落ちないように、肘を体につけます。そのためには、背筋が伸びている必要があります。つまり、胸を張って「いい姿勢」をとらなくては速く打てません。
胸を張って背筋を伸ばすと脇が閉まる、すると手はまっすぐ前に延びます。
もう一つ、椅子の高さです。肘がほぼ直角になってテーブルにちょうど乗るくらいに椅子の高さを調節します。
速く打つためには、キーボードの位置にも気をつけます。
文字を入力するのに、テンキーや矢印キーは必要ありません。従って、キーボードの真ん中はこれらのキーを除いた部分の中央、つまり「スペースキー」ということになり、このキーが体の真ん中(おへその前)になるようにキーボードの位置を決めます。また、キーボードを机の端に置かずに、拳ひとつ分ぐらい奥におきます。この、体とキーボードとのすき間には、鉛筆とか紙とか、ものを置かないようにします。
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「ホーム」は、元になる場所、です。「行ってきます」と出かけて、帰ってくるところが「ホーム」ですし、ホームランを打った選手は、「ホーム」まで戻ってきます。ポジションは「(守備)位置」ですね。いつもいる場所(位置)で、出かけても必ず帰ってくるところが、「ホームポジション」です。
キーボードをよく見ると、中央近くの「F」と「J」には、他のキーにない印が付いています。たいていは、小さい出っ張りですが、他のキーよりへこみ方が深い場合もあります。いずれにしても、目をつぶっていてもこの二つのキーは、他のキーと区別がつくようになっています。この二つのキーに、両方の人差し指を乗せるのが、ホームポジションです。つまり、パソコンの前に座って、キーボードに手を置いたとき、触っただけでホームポジションがわかるようになっているのです。
(印の付いたキーは、デスクトップパソコンの場合、テンキー:電卓と同じ並びの数字のキー:の中央「5」にもついています。これは、伝票処理などでキーを見ないで数字を入力するための「ホームポジション」を示しています。)
人差し指の位置が決まったら、小指までの4本の指を順にキーの上に載せていきます。右の小指は「;」(セミコロン)、左は「A」の上になります。親指は両方とも、スペースキーの上に軽く載せて、決してキーボードに<つっかい棒>になるようにはしないでください。つっかい棒になると、どうしても手が「ハ」の字になり、標準の指使いでのキータッチがしにくくなります。
指の乗せ方は、四角いキーの真ん中に真上から直角に、が基本です。ピアノを弾くときの形に近いです。指が伸びていたり、外向きに寝ていたりしては、上手に打てません。
これがホームポジションです。「ホーム」ですから、ホームポジション以外のキーを押したら、必ず元の位置に指を戻します。ホームポジションの上の段のキーを押すには、指を伸ばします。伸ばすためには、ホームポジションでは指は曲げておかなくてはなりません。下の段のキーは、指を更に曲げて押します。キーを見ようと肘を開く人が多いのですが、姿勢を崩してはいけません。どのキーを押しても手の向きは一定に保ちます。キーを見る習慣をつけないようにしましょう。
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キーボードの練習をするときには、決して手元(キー)を見てはいけません。
グラフをひとつ紹介しましょう。
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練習すれば上達できる、つまり、直線Aをたどるのだろうと思われるかも知れませんが、実際には、練習の仕方によってBまたはCの形になります。目標ラインは、「見ないで打てる」です。
見るとわかるようにBでは、目標を超えることができません。これは、手元を見る習慣のついた人です。練習の初めは、キーの場所を覚えるのが速いので、入力スピードの上がり方は速いです。しかし、画面を見て手元を見て、という視線の動きに限界があるのと、手元を見ないと打てない、という制限から、ある程度のスピードからあとは上達することができないのです。
Cは、絶対に手元を見ない、という練習をしている人です。初めはなかなかスピードが上がりません。しかし、指がキーを覚えてくる☆ぐらいになると、上達の勢いがついて、すぐに「見ないで打てる」ようになります。目標を楽に超えることができます。
同じに練習しているのに、※の位置では大差がついて悔しいので、CからBに乗り換えてしまう人もいます。これは、ぐっと我慢して、Cをたどってほしいです。
Cで、☆を越えて、順調に上達しても、時に目標直前でスランプ状態になることもあります。そういうときでも、「絶対に手元は見ない」を信念に練習を続けることが大切です。上達の鉄則は、「手元を見ない」です。
ちなみに、大人の方でも、この鉄則を守って練習を続ければ、必ずタッチタイピングをマスターすることができると信じています。わたしがマスターしたのも、大人になってからです。
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日本語(漢字仮名交じり文)を画面に素早く出すための技術には、3段階あります。
@ 指がキーの位置を覚えて、入力したい字を素早く打てる
A 仮名に対応したアルファベットの組み合わせを、指が覚えて、思った通りに画面にひらがなを表示できる
B できるだけ少ない操作で、入力したひらがなの羅列を、日本語として正しい漢字仮名交じり文に変換できる
この、@とAは、ホームポジションを使えれば、かなり速くできるようになります。また、この練習ソフトはけっこうたくさんあります。@が多いです。しかし、一般的に市販されていたり、フリーウェアとして公開されているものは、入力のスピードを競う形のものが多く、子どもたちが授業やその延長として練習するには向いていません。
以下に、授業でお勧めしたいものをいくつか紹介します。なお、ご紹介するソフト作成者と筆者とは、何の個人的関係もないことをお断りしておきます。
練習に際しては、
(ア) 姿勢
(イ) キーボードの位置
(ウ) ホームポジション
(エ) 手元を見ない
の4点を、その都度確認して始めることをお勧めします。この4点がおろそかになると、きちんとタッチタイピングをマスターすることは難しくなります。むしろ、好ましくない癖がつきやすく、そうなると修正するのがたいへんです。逆に、タッチタイピングをマスターすると、パソコンの前に座ったときに、自然に背筋が伸び、マウスだけで操作していても、片肘ついたりすることもほとんどなくなります。
◇キーボードモンスターズ/キーボードモンスターズ魔王島編
教材ソフト。RPG形式でモンスターを倒していくことで、タッチタイピングをマスターできる。初めはアルファベット、ゲームが進むと、ローマ字入力でひらがなを入力する練習となる。(かな入力も選択できる)主人公になって、画面の登場人物と会話を進めていくことで、自然に上達できるように作られている。ゲーム感覚で、画面の会話を読まなかったり、練習時にホームポジションがいい加減にならないよう、きちんと指導することが必要。ゲーム進行にばかり集中してしまうと、ホームポジションを忘れて「遊び」になってしまう。現在(平成18年4月以降)は市販されていない。学校で教材として導入できる。
◇Ozawa-Ken
フリーウェア。基本練習であるKawara(かわらわり)のほか、対戦ゲームなどを楽しめる。起動後はすべてキーボードで操作できる。Kawaraでは、画面の上部に問題、下部にキーボードの絵と使う指が表示される。(別稿8.到達表、9.到達表について 参照)ミスタイプが少なく、タイプスピードがある程度の基準を満たすと、「合格」となる。授業では、3回「連続」して合格できれば、クリアと見なすなど、遊びにならないような工夫も必要。
インターネット上でキーボードの練習ができる。ホームポジションでローマ字入力でのひらがな入力から初めて、漢字仮名交じり文までが課題になっている。30の段階を経て日本語が打てるように練習するが、練習には登録が必要。(グループやクラスごとに、担当がメンバーを登録)登録は小学生のみ。登録しないでも、サイト内の体験ツアー(『トレーニングをする』)で、じゅうぶん練習が可能。
校内ネットワークで練習できるパッケージ版も販売されている。また、一般向け有料練習サイト「キーボー島アドベンチャーDX」も開始された。
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国語としてアルファベットを使わない日本でパソコンを活用するには、どうしてもパソコン特有の「アルファベット(の書かれたキーボード)を使って日本語を作る」という作業が必要です。日本語の文章をいったん頭の中でひらがなになおし、それをアルファベットに置き換え、これをパソコンの画面で再び元に戻す、という流れの中で、文字を作るためにアルファベットを使うという部分を無意識に行うのがホームポジションです。これを1つ1つ拾っていたのでは、作業能率が上がりません。また、パソコンが単なる清書の道具にしかなりません。
パソコンでの文字入力は、書きなおし、推敲がたいへん楽です。消しゴムはいらないし、いったん入力したものの再利用が可能です。慣れると、手書きより遥かに速く文字を作ることができ、楽に文筆活動ができます。
キーボード入力を始めた時点で、同時にホームポジションを学んでしまえば、パソコンが清書の道具以上の馴染みのある道具になり、おまけに姿勢もよくなり、一石二鳥です。
ぜひ、くじけずにがんばって、ホームポジションを身に付けてください。
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