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簡単な説明のページ

初めてのキーボード
〜1年生のローマ字打ち授業〜
 
平成14年9月27日
 
1.1年生からキーボードを使うということ
 パソコンを使う上で文字入力はさけて通れない項目です。また、低学年でも必ず文字入力する場面がでてきます。こういったとき、1年生からキーボードのアルファベットを使うことがほかのどの文字入力より有効だと考えます。
 理由はいくつかありますが、まず第一には、アルファベットは将来必ず使うことになるからです。アルファベットのキーの位置を覚えれば、英語を入力したりプログラムを組んだりするときにも役に立ちます。ショートカットキー*1も楽に使えます。
 カナキーを使うためにキーボードに書かれたひらがなの位置を覚える時間は、将来を考えると全く無駄な時間といってもいいほどです。
 次には、1年生の手の大きさです。日本語を入力するには、画面に50音表や漢字の一覧を表示してそれをクリックして目的の場所に文字を入力できるようになっている場合がほとんどです。アルファベットを知らないときにはこれが便利なように思いますが、手の小さい1年生がマウスポインタを目的の小さいアイコンにあわせて、それを動かさずにクリックすることは実はとても困難なことです。
 また、50音表の中から使いたい文字を探すということ自体も、実は大人でも結構面倒な作業です。表をクリックするためには、1文字ごとに表から文字を探さなくてはなりません。キーボードに書かれたひらがなを探すのはさらに暇がかかります。濁音なども別に入力しなくてはなりません。それに比べてアルファベットならば、使うキーの数は長音(“ー”)を入れてもたったの24個です。(場合によっては25個か26個−Q以外は人によって使う場合があります。それでもひらがなの数の半分です。)これだけのキーの組み合わせで文字ができる、ということがわかってしまえばいいのです。アルファベット自体の文字の名前は覚える必要はありません。
 四番目には、一年生にとってアルファベットがひらがなになる、というのがとてもおもしろい、ということです。文字入力が面倒になり、パソコンがうっとうしいものになっては一大事です。マウスを使ったり、キーボードのひらがなを探すより、アルファベットをひらがなにする方が楽しめることなのです。パソコンが楽しい、ということは、低学年にとってもっとも大切なことだと思います。
 あえて「ローマ字」という言い方はしません。というのは、パソコンの文字入力は「ふりがな」をふる感覚がもっとも近く、4年生以降の国語ででてくる「ローマ字」とは異なっているからです。今「ローマ字」という言葉を使うと、後で混乱することになりかねません。
 いわゆるローマ字表記を使った文字入力については、別稿31.ローマ字入力の秘密に詳しく書いています。1年生に初めて文字入力を教えるときの、もう一つの導入方法も紹介していますので、こちらも合わせてご覧ください。
 
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2.授業の進め方
 環境
 パソコン室の環境としては、教師機からサンプルファイルを生徒機に転送して使え、ワープロとして標準のワードを使用することを前提としています。
準備
 3枚の50音表(表は7.50音表を使います)を台紙に貼ります。それぞれの紙の上の方にのりを付けて、めくれるようにしておきます。記名以外は何も書き込みません。授業にはこの表と鉛筆1本を持参します。
1時間目
 1台のパソコンの画面で説明します。プロジェクタ(スクリーン)は使用しません。ソフトはワープロ(Word)を使います。
 1年生でも知っているアルファベットのAが、「あ」になることを示します。以下、「い」「う」「え」「お」になるキーを紹介します。
 子音付きのひらがなを説明します。「ひ・ろ・た」(名前)では、すべて子音の文字はキーボードの文字(大文字)と画面に表示される文字(小文字)とが異なった形をしていますが、気にせず母音をつけるとひらがなに「化ける」ことを示します。(こうすることで、実際にキーを打つとき子供たちは、キーに指をおいてから、打つ前に視線を画面に移し、キーを打つと画面がどう変化するか注視するようになります。自然に大文字と小文字との対応も覚えてしまいます。)
 このように、すべてのひらがなが子音と母音を組み合わせて作ることができることがわかるようにして、配布した50音表の見方を説明します。説明に使った名前(「ひろた」を実際に書き込んだものを示して使い方の例にします。
 ここで各自の作業に移りますが、パソコンの画面を使った説明の中で、以下のことを織り込んでおきます。
 ・原則として、マウスは使わない。
 ・文字はカーソルのあるところにはいる。カーソルが別のところにいってしまったら、カーソルの移動はマウスか矢印キーを使う。
 ・間違ったらBackspaceキーで「消しながら戻る」
 ・文字を入れ終わったらEnterキーを押す。(破線が消える。「確定」の言葉は使わないが意味はしっかり説明する)
 ・一人ができたら、Enterキーで次の行に移って交代。(「改行」の言葉は使わない)
 作業は、まずこの50音表のひらがなのうち、自分の名前に使うかなに丸印をします。丸印のついたかなの下の空欄に各自アルファベットの組み合わせを書き込みます。書き込んだものを教師がチェックし、OKならパソコンの前に座って実際に打ってみます。表のなかで名前の文字以外の空欄は記入しません。(したい子はしてもいいですが、全部を埋めてしまうと答えの書いたカンニングペーパーのようになってしまうので、お勧めしません。)
 なお、「ふ」と「じ」は、特別に「FU」、「JI」を使います。これは、タッチタイピングをするときに楽なことと、ヘボン式ローマ字として一般的に使われているという理由からで、「HU」、「ZI」が間違い、ということではありません。このように、ワープロで許されているローマ字表記は何通りもありますが、表ではもっとも入力しやすい(キーボードの中央のキーを使い、ストロークが少ない)表記を選んであります。
 この時間は、自分の名前をひたすら入力します。(最低3回) できるようになったら友達や先生、家族の名前なども入力してみます。なれてくれば、表に書き込むことなく入力することができるようになってきます。何より、探した文字を画面に書ける、ということがおもしろくなってきます。
 パソコンは、必ず二人一組で使います。(以下同様) 二人で補い合いながらの方が楽しく、覚えも早いようです。
2時間目
 50音表をたどって文字を入力することがまだ全くできていないと思えば、1時間目と同様に名前を練習しますが、何とか自分の(下の)名前ぐらいはキーを覚えたと思えば次の段階に進みます。
 ここでは、ワードの「ページ罫線・柄」と「ワードアート」を使って、名前をカラフルに印刷します。
 用紙はあらかじめA5サイズ横の文書を準備し、生徒パソコンに転送しておいたものを開いて使います。(ワードの「開く」は使わない)
 メニューからページ罫線を入れたり、ツールバーからワードアートを起動することを、説明を聞きながら各自操作します。わからないときも、直接マウスを持つのは子供で、教師側は口だけにします。ただし、完成したものを印刷するのは教師側でします。
 罫線の柄を選んだり、ワードアートの位置や大きさを変えたりして、マウスの操作も上手になります。パソコン(ワープロ)がおもしろいと思えばしめたものです。
3時間目以降
 しりとりをします。1人1単語1行で交代。つまり、文字(言葉)を入力したら、Enterキーを2回押して交代します。
 2回目以降のしりとりは、次のようにするとバラエティに富んでおもしろいでしょう。
・二人ができたら、三人目に教師が参加。
・一人ずつ文字の色を変える。
・二人組を組み変える。
 子供だけのしりとりが1時間で2ページ目(標準のページ設定で)に入れるくらいになったら、今度は1人1文の会話にしてもいいです。(Yes、No で答えられない質問など)先生も参加するともっと盛り上がるかもしれません。
 長音(“ー”)のキー、促音の入力の仕方は50音表にある説明などを参考にそれぞれ質問の都度話をします。
 パソコン室の机上には、キーボードの絵と三つの50音表が備えられています。これには、母音・清音の子音・濁音半濁音の子音に分けて色がつけられています。また促音についても説明が入っていますので、必要に応じて活用してください。
 しりとりは当分の間ひらがなのみにします。カタカナの言葉もひらがなでいいことにします。(ワードのオートコレクト機能は無視)
 
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3.ポイント
 文字入力の練習をしながら、パソコン操作の基本である次のことも自然に身につけさせてしまいます。もちろんさわりだけですが。
  ・マウスポインタの位置、形に注目すること
  ・ハンドル*2を操作することによって大きさを変化させること
  ・自然なマウス操作
  ・Backspaceキー、Deleteキー、ESCキー
  ・メニューやツールバーから機能を選択して実行すること
  ・「開く」
  ・「閉じる」(マウスによる操作:×、ショートカットキー*3
  ・枠の選択
 これらのことは、これからパソコンを使っていく上でとても大切なことばかりです。はじめからこういうことがらに対して正しく判断し対応できるように、教師の側はなるべく手出しをせずに、わかるように説明して、子供自らが操作できるようにしていくことが大切だと思っています。
 
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4.以降の授業
 50音表から、キーボードでの文字入力の仕組みがわかってきたら、ホームポジションからタッチタイピングの練習に進みたい。冒頭にも述べたように、4年生からのローマ字とパソコンでのキーボード入力とは本質的に異なります。理想は、4年生でローマ字が始まる段階では、パソコンでのキーボード入力は完璧にマスターしていてほしいところです。「完璧にマスター」とは、ひらがなを頭の中でアルファベットに分解せずに、自然に指が動くようになることです。この練習は、2年生ぐらいになれば十分始めることができます。
 もちろん、小学校で覚えたいパソコンスキルは文字入力だけではありませんが、文字入力だけは継続して練習することが大切だと思うので、スケジュールの許す限りできるだけたくさん組み込んでほしいところです。
 (タッチタイピングの練習については別紙。)
以上

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*1 CTrlキーやShiftキーとアルファベットキーとを合わせて押すことにより、マウスを使わずにコマンドを実行する方法。
*2 挿入された図やイラストの周りにある8つの小さい□のこと。■や◇のこともある。
*3 Alt+F4 → “N”(いいえ)/“Y”(はい)