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絵本作りを通して学ぶコンピュータスキル


 
絵本という、子どもたちにとって馴染みのある作品作りを通して、コンピュータスキル及び、ワープロ機能の基本について自然に身に付けられるように考えました。なお、ここでは基本的に文字入力は行いません。
実践での対象学年:4年生(後半)
実践で使用したアプリケーション:Microsoft Word 2000/2003 、MSペイント
絵本完成までに要した時数:6時間(あらかじめある程度の関連するスキルを身に付けている場合)
※一般的に予想される必要時数:5〜8時間(以上)
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改行なし(一つの段落として)で、A4用紙1枚以内に収まる程度の、絵本になりそうな一つの話の文章のみを、印刷して配布。また、同じデータをワード文書のファイルとして子ども一人一人に配布。
文章の量としては、概ね1000〜1200文字程度が適当です。
※著作権について : ここで教材として使用する文章に、既刊の書籍などを利用する場合には、著作権について充分気をつけてください。特に、全文を使用する場合には、著作権者にご確認ください。

・印刷したものを読み、段落の区切りに鉛筆で印を付ける。
・配布されたファイルを開く。
・文章とレイアウトの体裁を整える。
@段落区切り(エンターキーで段落記号−改行マークを付けて段落を分ける)
Aインデント(字下げ)
B用紙の設定(B4用紙横置き縦書き、袋とじ)
Cフォントなどの飾り(さし絵も含めて全体で5〜6ページになるように文字の大きさなどを調整。1000文字程度の文章では、20ポイントで5ページほどになる。)
※本来、インデントは用紙の設定のあとで行うのが適当ですが、Microsoft Wordの仕様では、縦書きでインデントの設定がやりにくいので、この順になっています。
・文章に合うさし絵を、できれば数枚描く(画像枠として挿入できるデータを作成)
・先の文章に、描いた絵を画像枠として挿入し、レイアウトを整える。
・表紙用の紙を作成(本文と同じ用紙の設定、タイトル、作者名、自分の名前、さし絵)
表紙と裏表紙の見開きページ位置関係に注意
・製本
中の文章は中表に折り、ノリで縁をくっつける。その後、表紙をかぶせてノリ付け。
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ただしこれは、コンピュータスキルではなく、国語の力です。文章を読み、適切な箇所で段落を分けることで、絵本としての体裁を整えることができます。また、さし絵も考えやすくなります。

段落記号−改行マークの使い方、ワープロソフトでの段落の概念。つまり、コンピュータ上では、段落記号から段落記号までが一つの段落としての扱いを受けます。ワープロソフトなどでは、段落として持つことのできる属性がたくさんあります。インデントやフォントなどは、一つの段落をいくつかに分けるとそれぞれの段落に引き継がれます。また、改行幅、段落の前後の空き、囲みなど、様々な属性が段落ごとに設定できます。段落の概念を捉えることは、コンピュータで文章を扱う際の大切なスキルの一つです。

文章をレイアウトするとき、段落の始めに1文字字下げをしたり、イラストを挿入(印刷後に切り貼り)するための空間を空けたりします。これを、スペース(空白文字)を挿入することでレイアウトすると、あとで文章の文字数を変える必要が出てきたとき、全体をまた、空白文字を挿入し直してレイアウトし直さなくてはなりません。これを、インデントや揃え(右寄せ、中央揃え、均等割付など)でレイアウトしておけば、文章の置き換えで文字数が変わっても、一切レイアウトが崩れることを心配することはありません。コンピュータは、段落記号(改行)だけで文章を区切って処理しています。空白文字も、句読点も、(厳密に言えば段落記号も)他の文字と同じ1文字の扱いであることがわかれば、自然と空白でレイアウトすることが不自然であることがおわかりいただけると思います。
※ワープロソフトでの空白文字の扱いについては、直感では説明のつきにくい独特のものがありますので、ここで詳しく書くことができません。また別の機会に、空白についての記事を載せることを考えています。

ページ設定、とか、文書スタイル、とか、書式、などと言われるものが、この設定です。用紙の大きさ、使い方(縦置き・横置き、横書き・縦書き)、袋とじや段組などがあります。ワープロソフトによって、設定の仕方や、呼び名が異なっていますので、お使いのソフトで確かめてください。なお、ページの設定としてフォントや飾り(ページ全体の囲みなど)、行数や1行の文字数なども含まれることがあります。これも、ソフトによって設定の仕方(メニュー項目の名称など)が違っています。一般的にこれらの設定は、文章を入力したあとでも変更することができます。子どもたちにとっては、初めから決められた用紙や文字の大きさで作りたくなりますが、あとから好きなように変更できることが、コンピュータで何か作業するときの便利な点ですので、文字入力とレイアウトや飾りは、全く別の作業であることを意識できるように、始めに説明しておくとよいと思います。

(5)フォント(文字のサイズ、形、色)の意味と付け方、文字選択のやり方(編集→すべてを選択・ドラッグ・Shift+矢印キー、ShiftキーやCtrlキーの使用など)、ドロップキャップのような飾り
前項でも書いたように、文字を入力することと、飾り(フォント・色など)を付けることは別の作業です。(厳密に言えば、文字入力には、キーボードからの入力と、文字種の変換の二つの作業があります。) 書いた文字に飾りを付けるには、「選択」することが必要です。普通選択するには、マウスでドラッグしますが、1文字だけの選択はマウス操作が細かいし、また、文書全体を選択することも、量が多ければたいへんです。選択操作が、マウスドラッグの一つ覚えではなく、いろいろなやり方ができることを知っておくと、ワープロソフト以外のところでも応用が利きます。
(選択操作の詳細については、「23.パソコンと仲良くなろう 8.困った時は 3)選択の操作」を参照してください)

(6)さし絵の作成(文章を読み取りイメージする力、イメージを実現する力、用紙の中での配置などは、国語や図工の力)
色の作成、アンドゥ、スポイト等、スタンプを使わないお絵かき。
MSペイントを使わせると、たいていの子どもたちが「肌色がない」と言います。肌の色は「肌色」ではない、ということは、子どもたちに気づいて欲しいところですが、「えのぐ箱」にない色の作り方は一度は説明したいです。この色の作り方は、他のどんなところでも出てきますので、使い方を覚えておくことは無駄ではありません。また、高学年になれば、「光の3原色」(の数値)の組み合わせで色を表現していることも理解できるでしょう。
アンドゥ(元に戻す)機能は、コンピュータならではの機能です。普通は、描いてしまった線を<完全に>なしにする(描く前の状態に戻す)ことは不可能ですが、コンピュータならできるのです。MSペイントでは、3回前の操作まで戻すことができます。なるべくショートカットキー(Ctrl+Z)を使うことをお勧めします。なぜなら、これを覚えておけば、ほとんどどのアプリケーションでも「元に戻す」ことが楽にできるからです。これなら、失敗を心配せずに安心して作業することができます。
スポイト、というのは、画面にある特定の色と<全く>同じ色で他の場所を描きたいときに使います。絵の具を混ぜて作った色は、ほとんど2度と作ることはできないのに比べて、これも、コンピュータだからできることです。この機能を上手に使うと、写真上の何かを消してしまうこともできます。
コンピュータ上でお絵かきするときには、是非ともこういった、コンピュータならではの便利な機能を駆使して作業できるようにしましょう。絵筆をマウスに持ち替えただけのお絵かきでは、せっかくの道具のよさを生かせません。描いたものを消すにも、消しゴムひとすじではなく、別の色(白)で塗りつぶしたり、選択ツールで選択して削除したり、どうしても消したいときには全消し、という操作もあります。
これは、お絵かき、というよりもむしろ、コンピュータスキルの習得、と見てもいいと思います。お絵かき一つ取ってみても、このようにコンピュータとしてのスキル向上を図ることができますので、いろいろと工夫してください。

(7)画像の挿入:枠の操作(文字と画像枠とのレイアウト上の関係、枠の大きさの変更・移動・削除・透過・縦横比)
イラストも写真も、挿入した表やグラフのほとんどは、「枠」です。これらすべてを、一律に「枠」として意識することができれば、ワープロソフトだけではなく、どんなアプリケーションでも、レイアウトを楽にこなすことができます。「枠」は、大きさを変えたり移動させたり、文字列との関係を決めることで、文字列のインデントと絡ませて、文書のレイアウトを思うように作っていけます。また、「枠の選択」の仕方を覚えれば、複数の枠を整列させたり、大きさを揃えたり、様々な操作が可能です。アプリケーションによっては、挿入された枠を操作するためのツールバーで特殊な処理を加えることもできます。

(8)飾り文字の作成(ワードアート、オートシェイプ、MSペイントなど)
たいていのワープロソフトには、文字を画像のように加工して挿入できる機能がついています。ワードではワードアートと言います。操作性はそれぞれですが、慣れるとたいへんおもしろい効果が得られます。表紙や裏表紙の文字にこういった加工を加えると、絵本としての体裁を見栄えのよいものにすることができます。また、ワードのオートシェイプのような、図形だけを組み合わせて図案化する機能も、子どもたちの発想でたいへん楽しい絵を作ることができます。

(9)製本(のり付けなどは、図工の力?)
できあがった本文と表紙の紙を、上手に貼り合わせることで、しっかりした本に作ることができます。普通行われるように、印刷面を表にして二つ折りにするより、中表に折って縁を貼り合わせることで、扱いやすい本の形になります。このとき、紙がのりで湿って伸びたりしないように、スティック状ののりを使うことをお勧めします。できあがってみると、思いの外いい絵本になります。是非お試しください。
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◆文字入力:絵本にできるほどの量の文字入力を子ども全員が同じように行うことは、個人差が大きいためたいへん困難です。従って、ここでは、本文はあらかじめ入力しておいたものを使いました。文字は、表紙や裏表紙の飾り文字や名前の入力程度にとどめ、入力練習は別の機会を設けています。

◆ここでは、アプリケーションとして、Microsoft Word とMSペイントを用いました。本来のワープロソフトや、お絵かきソフトで、(Windows)アプリケーションの基本的な使い方をマスターすることで、他の(子ども向けのアプリケーションだけでなく)一般的なアプリケーションへの抵抗感をなくし、コンピュータが道具として生きてくる次の段階へ繋げていくことができます。ワープロやお絵かきソフトとしての機能は、概ねどのアプリケーションでも同様と思われますが、こういった理由から、敢えて子ども向けに導入されているものは使わず、一般的なMicrosoft WordとMSペイントを用いました。

◆お絵かきソフトとしてMSペイントを用いました。コンピュータ室の生徒機には、子ども向けのお絵かきソフトが導入されているのが常(つね)ですが、こういったアプリケーションには、スタンプ機能があって、ともすると子どもたちはスタンプをちりばめただけで、自分の絵を描かずにお絵かきをすませてしまいます。また、アンドゥが1回きりだったり、グラデーションや柄(がら)の塗りつぶしを使って塗り直しができなくなったり、と、子どもたちにストレスのかかりかねない仕様になっていると感じます。その点、MSペイントは、機能はシンプルで分かりやすく、自然な操作で無理なく絵の作成ができます。学校によっては、ペンタブレットなどが導入されているところもあると思います。お絵かきでは、こういう道具を使うのもよいと思います。

◆あくまでも、作品を完成させることが目的ではなく、作成を通してスキルを身に付けることが目的です。従って、教師の側で完成品をイメージして作成を急(せ)かしたり、強要したりすることで、子どもたちがコンピュータに背を向けることがないよう、気配りするよう心がけました。さし絵の数も、時間配分で制限を設けていません。余裕のある子どもや、思い切りのいい子どもたちはたくさん描きますし、最低1枚ですませています。
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◆この実践では、コンピュータスキルを身に付けることを第一の目的としていますが、上記のように国語や図工とも絡ませて考えることができます。時数は、これらのことを考えて膨らませることも可能です。また、学年によっては、簡単なワープロソフトを用いたり、あらかじめ教師の側である程度の設定を行っておくことで、これらのスキルのうちいくつかを省いて時数を減らすこともできますので、幅を持って活用ができるものと思っています。

◆今回は、絵本作成にかかる前に、これらのスキルのうちいくつかは別の課題で練習をしています。従って、それらのスキルの定着を目指して、まとめの意味での課題としましたが、時数を増やして、それぞれのスキルの紹介とすることもできます。年間でスキルアップに割ける時間は限られているか、あるいは全くとれないことも考えられますので、課題を絵本に限らず、教科や総合のまとめとして、それぞれで時数をカウントしてもよいと思います。

◆お絵かきについては、必ずしもコンピュータを使わなくてもいいと思います。絵の具や色鉛筆などで描いたもの(こういうコンピュータの外のことを、アナログ、と言うことがあります)をスキャナで取り込んで使うこともできます。図工色を強めて、こういうやり方も選択肢の一つとして考えられると思います。
 
平成17年3月29日 記
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