情報教育アドバイザーとして、主としてパソコン室でのパソコンスキル向上を目的とした授業に携わってきました。最近、授業用パソコンの環境が新しくなりました。
新しくなったパソコン室での最初の授業で、子供たちに説明した内容をここに載せます。
ここでは、生徒用パソコンが40台、すなわち、一人1台になりました。また、OSも、Windows 98からWindows XPに変わりました。起動時の画面も、全画面のプログラムランチャーから、一般的なデスクトップ画面になりました。つまり、子ども達の家庭にあるパソコンに似た環境になったというわけです。
この、環境が変わったことを契機に、改めてパソコンを道具として活用する折りに大切なことを確認することにしました。
スキル授業として行っていることは、特定のアプリケーションを使いこなすことではなく、どのアプリケーションを使う時にも有効な、パソコンの基本的な操作と動作に関する事柄が中心になります。情報を扱う手段としてパソコンが活躍できるためには、これを一つの道具として使えることが望まれます。そのためには、いろいろなアプリケーションが同じように使えるスキルを身につけたいものです。
パソコンは電気で動く電気製品の道具です。ただし、洗濯機や掃除機などの電気製品とは全く違う点が一つあります。それは、使い方が決まっていない、という点です。使う人によっていろんな道具になります。こんな電気製品はほかにはありません。どのようにも使うことができるためには、それなりにこの道具について知っていることが必要です。
道具があって、その使い方がわかっていれば、誰でもそこそこのことができます。一般的な道具では、使い方が上手な人ほど、仕上がりはよいものです。でも、パソコンの場合には、どのような使い方をしても、できあがりに違いが見られないこともあります。これがデジタルの世界のいいところのひとつなのですが、できあがるまでの課程は、その使い方の上手下手で大きく異なってきます。
できることならば、便利で簡単、さらにパソコンの特質をよく理解した快適な使い方を身につけてほしいと思っています。
以下に、こういったパソコンの操作や動作、更に「一人1台」という意味について考えて欲しかったことを並べてみました。
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今まで二人で1台だったパソコンが一人1台になりました。とてもうれしいし、楽しみなことです。しかし、この「一人1台」というのはどういうことか、改めて考えてみましょう。
二人で1台の時は、どちらか一人がうっかりしていても何とかなってしまいました。しかし今度は違います。自分自身がしっかり聞いていなければ、使えなくなってしまいます。
しっかり聞く、というのはどういう意味でしょうか。それは、「使えるように聞く」という意味です。片方の耳から入った言葉が、反対の耳から出ていかないように、しっかり頭でキャッチしましょう。
また、聞いていないためにわからなくなって先生を呼んだとしましょう。先生がその人のところへ行っている間、せっかく自分の力でわかっていた人たちは待っていなくてはなりません。
聞いていない、ということは、自分が困るだけでなく、他の人たちの迷惑にもなるのです。
もし、わからなくなったら、お互い助け合ってください。困ったらそっと周りの人に聞いてみましょう。聞かれた人も、親切に教えてあげましょう。
こうすることで、決まった時間の中で、みんなが覚えることが増えます。
教えてあげるときは、「やってあげ」てはいけません。「教えてあげ」てください。手を出さずに口を出す、ということです。実際にパソコンを動かすのはわからないその人自信です。そうすれば、次に困ったとき、自分で解決できるようになります。
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さて、パソコンです。画面が、普通のうちにあるパソコンの画面に大変よく似ています。パソコン室の画面は真っ青ですが、お家のパソコンでは、画面にお気に入りの写真やイラストなどが写っていると思います。こういう画面のことを『デスクトップ』と言います。
デスクトップ、の「デスク」とは「机」、「トップ」とは「てっぺん」です。机のてっぺん、つまり、普通に机の上、という意味です。
勉強する時には、机の上に、ノートや教科書、本などいくつものものを載せています。パソコンのデスクトップも同じで、いくつものものを同時に載せることができます。こういう風に、いくつかのものを載せてパソコンを使うやり方も覚えていきましょう。
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さて、デスクトップですが、ここには小さい絵がたくさん載っています。この絵のことを『アイコン』と言います。これは、簡単に言うと『目印』です。
どういう目印か、というと、パソコンの中のあるものへの目印です。(厳密に言えば、ショートカットアイコン、ですが、簡単にアイコンとしています。)
例えば、図書室で面白い本を見つけたとします。その本をもとの棚にしまって、また次に行った時同じ本を見たくなった時のことを考えてみます。その時は、本をしまった場所を思い出してそこへ行かなくてはなりません。もし、場所を忘れてしまったら、また探さなくてはなりません。図書室がとても広かった時は大変です。
パソコンでは、こういう時、見つけた本に長いひもをつけます。そのひもの反対側を机の上に並べたものがアイコンです。見たい本のひもを引っ張れば、目的の本を机の上に広げることができる、というわけです。
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では、アイコンを使って目的の本を机の上に広げることにします。
普通には、アイコンをマウスでダブルクリックします。
ダブルクリックしないでこういうやり方もあります。このやりかたは、パソコンと会話を進めることで本を広げます。
まず、マウスでアイコンをクリックします。すると、アイコンの色が変わります。これは、クリックという動作でパソコンに話しかけた結果、パソコンがアイコンの色を変えて返事をした、と考えることができます。
パソコンの返事が正しかった場合は、またこちらからパソコンにOKの返事をします。パソコンに「いいよ」と返事をするためのボタン(キー)がEnterキーです。
Enterキーは、キーボードの中でたった一つ、四角くないキーで、一番大きいです。とても目だちます。なぜこんなに目だつかと言えば、キーボードのキーの中でもっとも大切なキーだからです。ひと言で言えば、『決める』キーです。
文字入力の場合には、確定(文字を決める)だったり、改行(行を決める)だったりします。OKの場合もEnterキーを押します。(厳密には「押し」てはいけません。軽くぽん、とたたく、ぐらいにします。)
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欲しい本をデスクトップに広げることを、パソコンでは「開く」と言います。アプリケーションを終了するときに使う角の“×”のボタンにマウスを近づけると「閉じる」と出てきます。「閉じる」ものは「開いている」と考えれば理解しやすいでしょう。(この×を、「バツ」と言うことが多いのですが、「出口」を意味する Exit のXです。私はできるだけ「閉じるボタン」と言うようにしています。)
開くと画面に現れる画面を一般には「ウィンドウ」と言います。これは「窓」です。窓も開いたり閉じたりしますね。
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文字を入力したいとき、画面をよく見てみましょう。縦棒が点滅しています。この縦棒の位置が、パソコンが見ている場所です。文字はここに入ります。縦棒があっても点滅していないときには、文字入力はできません。
縦棒が点滅している、という場合には、パソコンは文字入力を待っている状態です。この縦棒(文字入力カーソルと言います)は、マウスや矢印キーで動かすことができます。また、文字入力したい場所に縦棒がないときは、マウスで目的の場所(たとえば保存するときのファイル名入力欄など)をクリックすれば、その場所が文字を受け入れることができる場所なら縦棒が現れるはずです。
また、クリックしたら、元ある文字列が反転(青くなったり黒くなったり)することもあります。このときもそこに文字を入力することができます。反転した文字は、一般的には消す(BackSpaceやDeleteで)必要はありません。新たに文字を入力したり、確定したりした時点で置き換わります。
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ジャストスマイルでのキーボード練習などでの表示です。
ジャストスマイルは、パソコンの便利な使い方を教えてくれます。それはどういうことかというと、何か操作するときに画面にこういう表示がある、ということです。
OK(Enter)
これは、マウスでこの箱(OK)をクリックしてもいいし、キーボードの Enterキーを押してもいい、という意味です。試しに、手をマウスから放した状態から、マウスでクリックするのと Enterキーを押すのと、どちらが速いと思いますか?
もしこういう表示を見たら、どちらでもよい、という意味だということを知って、ぜひ、キーボードでの操作も覚えてください。
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授業でパソコンを使うとき、個々のアプリケーションについての操作を事細かに説明する必要はもちろんありません。しかし、個々のアプリケーションに向かったとき困らないだけのスキルは身につけていてほしいものです。幸い、今のWindowsパソコンは操作上はほとんどのアプリケーションで共通になっています。この共通なところが「共通である」ことを理解できてしまえばしめたものです。
授業では、この理解に向けて一つ一つの説明をしています。
逆に言えば、「共通」部分がそうなっていない、いわゆる「子供向け」のアプリケーションは、子供に使わせたくない、と思っています。こういうところが「独自」のものは、パソコンで言えば決して「よい」ことではないのです。
言葉にしてもそうです。「保存」を「ほぞん」と書き換えることはよしとしても、「とっておく」と言葉を換えてしまうことは望ましいことではありません。子供向けのアプリケーションは、子供だましであってはなりません。あくまでも一般的なアプリケーションを使う前段階として捉えるべきです。
「保存」や「開く」などのダイアログボックスのレイアウトは、あくまでも一般的なアプリケーションのレイアウトを踏襲すべきです。レイアウトが共通であれば、多少言葉が異なっていても構わないといえます。上に書いたことと矛盾するようですが、そうではありません。(大人でも、いちいち「保存先」の文字を読んでいるとは思えません。)
ショートカットキーの使用や、「元に戻す」が何度でも戻ることができるなど、大人にとって便利な機能は子供にとっても同様に便利な機能です。子供向けだからといってこういう便利な機能を省いてしまうことは感心しません。
子供が使うことを前提としてアプリケーションを選ぶ場合には、こういう視点を忘れないでほしいと思います。また、開発に携わっている方々にも、同様にお願いしたいと思います。
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